Copyright©2019, GALLERY MURYOW. All Rights Reserved.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高度情報化社会といわれる昨今、人々の関係はより広大で即時性の高いネットワークで繋がり、なお拡大しています。 欲しい商品がワンクリックで自宅に届き、話題のニュースがリアルタイムで入手できる、高度にシステム化された社会です。 一方で、物事の因果関係やプロセスはますます複雑に、間接化し、不透明なものになっていきます。私たちが日々何気な く消費している電気や水、食事、衣服、娯楽品、あるいは情報といったものはどこからどのように来るのでしょうか。

 私たちの生活は途方もない数の「他者」との関係の上で成立しています。しかしながら、関係が間接的になればなるほど、 相手は「私」の認識から外れていきます。知らず知らずのうちに顔も見えない他者に依存しているのは怖いことでもあり ます。なぜなら社会における関係性は仲良し小好しの調和的で安定的なものだけではないからです。社会には衝突や分断 を引き起こしたり緊張や利害が生じるような、不安定な関係も同時に存在しています。私たちの欲望や消費欲求によって 生じる無邪気な暴力性や思いがけない利害関係が、「誰か」との間に成立しているとしたら―或いはそれが連続的な因果関 係によって、思いがけない形と規模で社会的なものに変化しているとしたら―(健全に機能する民主社会においては)そ れはできる限り認識しようと努力されるべきですし、自らの行動の選択において考慮されなければなりません。

 本展覧会では、政治哲学に由来する「 敵対(antagonism)」というキーワードを通して、「人と人」「人と社会」「人と自然」 など様々な関係を観察し、私たちの日常と世の中の繋がりを見ることを試みます。それによって、見えにくかった利害関 係や暴力性が浮き彫りになるかもしれません。「昨日の敵は今日の友」になり得るように、「今日の友は明日の敵」にもな り得ます。「わたし」とは何者で「あなた」とは何者なのか。「他者」との関係の可能性と限界点を探ります。

(佐藤弘隆)

 

本ページは、2018年5月にギャラリー無量で開催された「佐藤弘隆:昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵」展から約1年が経過し、本展のコンセプトから展開したいくつかの近作をウェブ上の展覧会としてご紹介する試みです。

00. Introduction

 佐藤弘隆(1993年-)は、社会に内在する利害関係や物事の多面性に着目し、映像や写真、コンピュータ・シミュレーションによる表現を通して、俯瞰した距離感から対象を記録し、鑑賞者に再解釈を迫る作品を制作する美術家である。本展では、佐藤が近年取り組んできた「敵対(antagonism)」のコンセプトに纏わる作品を二点ご紹介する。

 「敵対(antagonism)」とは政治哲学の用語であり、ナチスの政治理論家であるカール・シュミットが自著「Der Begriff des Politischen(政治的なものの概念)」において用いた用語である。シュミットは、政治的な営みを「道徳」や「審美」「経済」といった非-政治的な要素から引き離し、政治的主体とその「敵」という敵対の関係の中に見出すことによって、政治を純粋な形で捉えることが可能になると考えた。敵対の概念は、現代の政治学でも参照されており、重要な概念の一つである。

01. Frog of death

アーティスト:

佐藤弘隆  Hirotaka Sato

1993年新潟県五泉市生まれ。富山大学大学院芸術文化学研究科(メディアアート研究室)に在籍。物事の共犯関係や変化のプロセスにフォーカスした作品を制作している。表現手法は絵画や彫刻からインタラクティブなインスタレーション、映像、パフォーマンスまで多岐に渡る。  近年の展覧会に「アートフェア東京 2018」(東京国際フォーラム / 東京)、「Monster Exhibition 2017」( 渋谷ヒカリエ / 東京 ・hpgrp gallery NewYork / ニューヨーク)など。「アートフェア富山2017・ART AWARD」(富山市ガラス美術館)では《平面・立体部門》準グランプリを受賞。