
今夜、からだを脱け出して。
2025.8. 30[土] ー9.22[月]
土・日・月曜日 開廊
10:00-12:00 13:00-17:00
キュレーター:アーティストself
アーティスト:中坪弓子
観覧料:500円/人
[後援] 北日本新聞社、FMとなみ、となみ衛星通信テレビ
関連事業
2025.8.30(土)・14:00〜15:00
アーティストトーク
情報社会の過剰なインパクトから少し離れて、目に見えないものに目を凝らし耳に聴こえないも のに耳を澄ます空間へ。「今夜、からだを脱け出して。」では、音や映像の初挑戦作品を含め、 全て最新作を展示いたします。
情報社会に生きる私たち。SNSがより身近な情報発信ツールとなり、マスコミだけではなく一般 の人々も簡単に声を挙げることができるようになりました。そのような中、見受けられるように なったのは人目を引くための過剰なインパクトです。例えば、誤解を招いたり不安を煽るような タイトル、人工的でビビッドな色に溢れ、人・物ともに「映える」か否かが優先順位の高い判断 基準になっています。その目的は多くの消費者獲得と支持の継続です。そのため私たちが日頃目に する情報には、言葉や色、声や音、形等を利用した心理戦が行われているのです。
一方、そのような情報社会にどこか疲弊しているのも私たちです。過剰なインパクトで装飾された 情報は「私を見てください!」「『いいね!』ボタン押してください!」と私たちに大きな声で 叫んでいるように感じます。そしてその過剰なインパクトには、それほど意味の無いものをあたか も意味の有るようなものに見せる効果があり、自ら物事の本質を見抜こうとしなければ、ただ情 報に翻弄される思考省略人間が造られてしまう危険があるように感じています。またインパクトと は、人の注意を引くための心理効果を生み、その心理効果とは人をコントロールするための技術 ですから、おそらく人は無意識ながらそれを感じて疲れてしまっているのかもしれません。 今回の個展タイトルは「今夜、からだを脱け出して。」です。私たちもまた、自らの髪型や髪の色、 化粧や服装、話し方等外見を自己プロデュースし相手への印象をコントロールしています。その外 見である「からだ」と昨今の情報社会を重ね、それらを脱ぎ捨てた何者でもない自分になりたい という思いを込めました。
ちなみにこれまでの作品制作では社会問題である、いじめや差別、偏見をテーマとし、定型では ない若しくは醜い容姿ゆえ疎まれる者たちを主役に、赤い丸を描いて命を表現し生きものである ことを伝えたり、それぞれの模様を描いて個性を表現してきました。
「いのちのうつわ」2021年 紙に鉛筆、樹脂
「土に生きる」(一部抜粋) 2018年 パネルに和紙、鉛筆、メディウム
本展では、過剰なインパクトの情報社会をテーマにあえてその逆の世界を表現します。より目に見 えないものに目を凝らし、耳に聴こえないものに耳を澄ますことを意識して制作した最新作を展 示します。具体的には、主に樹や地層、木肌等の自然物を描いた作品を展示します。テーマとあえ て逆というのは、そういった自然物は鑑賞者によって様々なメッセージを感じ取ることのできる 対象物だからです。作家が一方的に一つのメッセージを伝えるのではなく、鑑賞者を尊重できる
展覧会として、例えば描かれた木肌を水の流れのようだと感じていただい てもよいのです。
また、昨今のニュースより日本の小中高生の自殺者数が過去最多514人と 報じられたことから生まれた作品は、91室の格子それぞれに91頭の幼虫 が飼われています。見た目は似たような幼虫ですが、その透き通ったから だの中には91頭それぞれ異なる色のいのちがあります。異なる色はそれ ぞれの個性や感情、そして使命を表現しています。
さらに、初となる映像作品や音声作品も展示します。音声作品では、植物 の生体電位を音に変換し、普段耳には聴こえないものを音として聴いてい ただくことで、植物の生命やその不思議等をお伝えできればと思います。 今回のテーマを考慮し、過剰にインパクトを与えるような演出はいたしま せん。例えば照明演出です。ただのペットボトルの蓋でさえ、スポットラ イトが当てられていれば人はそこに意味やストーリーを見出そうとしま す。それは意味の無いものを有るように見せる行為であり、鑑賞者へ のコントロールだと感じるからです。私の根底には「足るを知る」の
生体電位を音に変換する装置に繋いだ人参
考えがあります。今回の展示会場であるギャラリー無量は大きな障子窓から射す光がとても美し い空間です。時間と共に変化する光が作品にも様々な表情を与えてくれるので、ごゆっくりとその 空間をお楽しみいただけますと幸いです。